初節句

          【目次】1.節句とは

              2.女の子の初節句ですること

              3.男の子の初節句ですること

              4.次男や次女の初節句はどうするのか

              5.初節句祝いの贈り物とお返しのマナー

              おわりに

1.節句とは

 初節句は赤ちゃんが初めて迎える「節句」のことで、人生において一度きりのイベントである。子供の成長を祝い、無事に健やかに育つことを願うために、祖父母や親戚などを招いて祝賀会を計画しているという家が多い。しかし、初節句は両親にとっても初めての経験となる。そこで「初節句」の男女別の初節句の祝い方、頂いたお祝いの返し方、記念写真の撮り方などを知っておこう。
 なお、諸説あるが、生まれて21日以内に節句を迎えるようであれば、初節句を翌年に持ち越すこともある。家庭によっては初宮参りと初節句をいっしょにお祝いすることも多く、「こうしなくてはならない」ということはない。仕事の関係も配慮して、落ち着いて行うのが良いと言える。
 「節句」とは、一年のうち季節の節目となる特定の日にちのことをいう。もともとは中国に由来する風習で、節句の日には邪気や不吉を祓う祭りが執り行われた。中国から伝わった風習に、日本古来の宮中行事が交わり、日本では1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日の五節句が定着した。このうち3月3日が桃の節句、5月5日が端午の節句である。
 節句は「節供」とも書くことから、「季節の節目にお供え物をしたあと、お供え物を下げ、神様といっしょにそのお供え物をいただく」という習わしがあったのである。また、その節句を祝う行事として、古来日本の宮廷では「節会」という宴会が開かれており、そこで初節句を祝ったのが桃の節句・端午の節句の始まりとされている。そのため、飾るものと食べるものが節句にとっては重要なものとなってきた。
 女の子が初めて迎える3月3日が、女の子の初節句である。初節句では、女の子の健やかな成長を祈る。正式には「上巳の節句」というが、「桃の節句」や「ひな祭り」という呼び方もされる。
 桃の木には魔除けの力や長寿に導く力があるとされる。ひな人形を飾るようになった理由には諸説あり、平安時代の雛遊びに、自分を清める「雛流し」行事が混ざり、最終的にひな人形を飾るようになったといわれている。
 男の子が初めて迎える5月5日が、男の子の初節句である。5月5日は、「端午の節句」といわれるが、「菖蒲の節句」や「あやめの節句」とも呼ばれることもある。
 もともとは、菖蒲によって邪気を払う風習が中国から日本に伝わり、武運を祈る「尚武」という言葉とつながることで、男の子の成長を祝う日として定着したという説がある。最初は室町時代のころ武士階級に広がり、江戸時代には武士以外の人々にも浸透していった伝統的な節句である。

2.女の子の初節句ですること
 毎年訪れる桃の節句のなかで、初節句は特に盛大にお祝いすることが一般的である。「あかりをつけましょ ぼんぼりに おはなをあげましょ もものはな」という童謡も有名だ。
(1) 飾るもの・・・ひな人形や桃の花
  ひな人形には色々な形状、大きさがある。当初は親王飾りだけだったが、徐々に豪華になり、5段、7段と奇数段で増えた。天井近くまで積みあがった雛人形も珍しくない時期もあったが、昨今は住宅事情もあり段数の少ないコンパクトな雛人形が人気となっている。
  初節句では、さらに「吊るし雛」を飾ることもある。吊るし雛とは、紙製や布製で作製したひな人形、花、果物、動物、毬などを糸で繋いで吊るす飾りである。雛人形のまわりには、縁起が良くて 邪気をはらう力があるとされる5種の花を飾るのが一般的です。それは桃の花、桜、橘、菜の花、紅白の梅の花である。
(2) 食べるもの
  桃の節句で定番の料理や菓子と言えば、ちらし寿司、菱餅、あられ、蛤の吸い物などが挙げられる。男の子の節句よりも色鮮やかな食べ物が多いようだ。それぞれに意味合いが込められている。
・ちらし寿司……華やかで縁起のよい食材が盛り込まれていてお祝いの気持ち
・菱餅……下から緑、白、紅の順に重ねてあり、健康や安全を祈る
・あられ……各色が四季を表していて、四季を通じて幸せであることを祈る
・蛤の吸い物……一生添い遂げられる人と出会えることを願う

3.男の子の初節句ですること
 「柱の傷は・・・」と「甍の波と・・・」の童謡が有名である。五月人形と鯉のぼりを飾る。五月人形といってもいろいろな種類があり、鯉のぼりにもさまざまなタイプがある。
(1) 飾るもの・・・五月人形・鯉のぼり
 鎧や兜のお飾り以外にも一風変わったものなど、さまざまな種類の五月人形がある。下記は代表的な五月人形の例である。
・鎧飾り・・・特に本格的な五月人形である。鎧、鎧に加えて刀剣や弓など一式揃っているものが主流で ある。
・兜飾り・・・兜のみを飾るタイプである。大きさはいろいろで、子供がかぶれるものもある。
・子ども鎧大将飾り・・・子どもが鎧着をまとった姿の人形である。
・金太郎飾り・・・優しく力持ちを表す金太郎の人形である。
・武者人形飾り・・・武士の姿をした人形である。
 鯉のぼりも端午の節句では定番の飾りである。鯉が滝を昇り龍になるという中国の伝説に由来するも ので、鯉のぼりは日本で江戸時代中期に誕生したといわれている。子どもの成長や出世を願って飾られるようになったのである。
  元々は庭に飾った鯉のぼりだが、昨今の住宅事情によりベランダや室内で飾れるミニ鯉のぼりや、 ウォールステッカーの鯉のぼりで祝うスタイルも多く見られる。
(2) 食べるもの
 端午の節句では、ちまきと柏餅を食べることが一般的な風習である。ちまきは中国由来で、日本では 武士が戦場に向かう際に携帯した食べ物で、のちに和菓子に変化したものといわれている。柏餅が食べられるようになったのは、江戸時代からといわれ、子孫繁栄の願いが込められている和菓子である。
・「筍」は真っすぐ伸びていくようにとの願いを込めたものである。
・「出世魚」は立身の祈りをこめもので、カツオは「勝つ男」にちなんだものとして食べられる。

4.次男や次女の初節句はどうするか
 子供が初めて迎える節句が初節句である。では、2人目、3人目というように、兄弟姉妹が産まれた場合の「初節句」はどうなるのだろうか。
 当たり前のことだが、初節句は、その子供にとって人生最初の節句なので、次男や次女にとっても「初節句」は初節句である。「食べるもの」は新たに用意するのが当たり前として、「飾るもの」についてはどうしたらいいのだろうか。
 男の子も女の子も、子供1人に対して1つの飾り(人形)を用意するというのが基本的な考え方である。お雛さまも五月人形も、赤ちゃんを厄災から守る「身代わり人形」としての役割もあるため、節句の時期に飾っておくと良いとされているため、本来はそれぞれの子供の人形が必要とされた。昔は嫁ぎ先に自分のひな人形を持参する風習もあった。五月人形やひな人形は、子供ごとの守り神という考え方もある。そこでいわゆる「お下がり」ではなくそれぞれの子供に用意するのが本来の姿とされた。なお、雛人形は、母方の祖父母が贈ると良いとされているし、五月人形は、父方の祖父母が贈ると良いとされている。
 ただし、鯉のぼりについては、庭に立てる大きな鯉のぼりを子どもの人数分立てるというわけにもいかない。昔は真鯉1匹だけを飾っていたともいわれている。明確な決まりはないのだが、子供の人数分の子鯉を増やすという家庭が多いようである。
 そうは言っても子供の人数分人形飾りを準備するのも、飾るのも現実には大変である。そこで、男の子でも女の子でも、人形は1セットで、子どもが増えたときは名札板や名前の掛け軸だけ作成していくというケースもある。また女の子であれば、吊るし雛のみ増やしていくというケースも多いようだ。

5.初節句祝いの贈り物とお返しのマナー
 初節句を迎える子供が何月生まれかによっても成長の度合いに差があるため、一番いいのは両親に「何がほしいか」を聞いてしまうことである。いらないもの、サイズが合わないものを頂いても迷惑である。相談しにくい場合は、比較的多く見られる贈り物の例として、知育玩具(積み木やブロックなど)、タオル、洋服、子ども用のお菓子や飲み物、ベビーオイルといったものがある。
 品物ではなく現金を贈ることもある。「お祝い」「初節句祝い」「祝初節句」などと表書きした祝儀袋に入れて贈ることのなる。贈るタイミングは、初節句の半月前~当日までが適切とされる。ただし、この日とか何日前と決まっているわけではないが、初節句を過ぎてしまわないように贈るのがマナーである。
 お返しは「内祝い」とする。「内祝い」とは、内々のお祝いというのが本来の意味で、現在ではお祝い事の幸せな気持ちをお分けするといった意味合いで使われる言葉となっている。初節句では、実質的に頂いたお祝いに対するお返しなのだが、「内祝い」と表記した熨斗紙をつけて贈ることが昔からの習わしとなっている。

おわりに

 こうした古来から続く祝い事だが、近年のジェンダーフリーの考え方とはうまく折り合いが付かない可能性がある。しきたり縛られず、子どもの祝いに最も良いと思われる方法が模索されるのがいいとお思われる。

       2024年5月(皐月)20日(月)        (May20th Monday・卯月13日)