文化の日
「文化の日」は、11月3日です。この日は、1946(昭和21)年に日本国憲法が公布された日です。日本国憲法が、平和と文化を重視していることから、公布日の11月3日が「文化の日」とされたのです。
「自由と平和を愛し、分化を進める」ことを趣旨とした国民の祝日です。
ただし、11月3日は、もともと「明治節」という祝日で、明治天皇の誕生日でした。また、「憲法記念日」は、日本国憲法が施行施行された、1947(昭和22)年5月3日を記念して、5月3日が国民の祝日とされています。「文化」という高尚なものに対して、こっそりと皇室制度の継承を忍び込ませているような気配がしてしまわないだろうか。人にも寄るだろうが、「スポーツ」に比べて「文化」の方が親しみが薄いという人は、決して少なくないだろう。もちろんスポーツであれ文化であれ、一流の域に達するには並々ならない努力と時間が必要とされるに違いない。古典的な分野を頂点として、一般人には親しみにくいものが感じられやすいものがあるという、その隙を突くかのようにして、何の関係もないはずの明治天皇の誕生日を潜り込ませているのは不愉快きわまりない。昭和天皇が、日中戦争や第二次世界大戦と深く関わっていたにも拘わらず、その死後も誕生日が「昭和の日」として残されているのと同じように、姑息でありながらしたたかな意図を感じない訳にはいかない。それは決して休日が一日増えたなどと喜んでいる訳にはいかないのである。その意味でも、取っつきにくくはあっても「文化」として大切にすべき事柄に、敢えて少しでも近づく習慣を付けたいものだ。たとえ良さが充分には分からないにしても、その年賞を受けたものについては、多少なりとも触れ、「賞を受けたものだけが優れているわけではない」と言い切れるような見聞の広さと鑑賞力とを身につけ、自分の感性を鍛えていきたいものだ。
文化の日関連イベント
文化の日に関連するイベントとしては、次のようなものがあります。
(1) 文化勲章
学問や芸術などの発展や向上にめざましい功績を挙げた人に勲章が与えられます。毎年5人ほどが選
ばれています。毎年11月3日に、皇居で授賞式が行われます。近年の受賞者は次の通りです。
《2022年度》 ・上村淳之(日本画) ・榊谷裕之(電子工学) ・別府輝彦(発酵学) ・二代目松本白鸚(歌舞伎) ・山勢松韻(箏曲) ・吉川忠夫(中国史家) | 《2021年度》 ・岡崎恒子(分子生物学) ・岡野弘彦(短歌) ・川田順造(文化人類学) ・絹谷幸二(洋画) ・七代目尾上菊五郎(歌舞伎) ・長嶋茂雄(野球) ・牧阿佐美(バレエ) ・眞鍋淑朗(気象学) ・森重文(数学) | 《2020年度》 ・奥田小由女(人形) ・久保田淳(日本文学) ・近藤淳(物理学) ・澄川喜一(彫刻) ・橋田壽賀子(脚本) |
(2) 文化功労者
文化の向上や発達に関し、特に功績のあった人を顕彰する制度で、終身年金350万円が支給されま
す。毎年15人ほどが選ばれており、文化功労者には文化勲章受章者を含みます。11月3日に発令され、
後日顕彰式が行われます。近年の受賞者は次のような方です。
《2022年度》 ・安藤元雄(フランス文学) ・伊賀健一(電子工学) ・池端俊策(脚本) ・加藤一二三(将棋) ・川原壽夫(長唄) ・小池一子(芸術振興) ・小山貞夫(西洋法制史) ・清水昌(応用微生物学) ・関根清三(倫理学) ・高橋弘一郎(近世日欧交渉史) ・勅使河原常恭(現代舞踊) ・中井貞次(染織) | 《2021年度》 ・岡崎恒子(分子生物学) ・岡野弘彦(短歌) ・川田順三(文化人類学) ・絹谷幸二(洋画) ・寺島秀幸(歌舞伎) ・尾上菊五郎) ・長嶋茂雄(野球) ・福田阿佐美(バレエ) (牧阿佐美) ・眞鍋淑郎(気象学) ・森重文(数学) | 《2020年度》 ・岩崎壽賀子(脚本) (橋田壽賀子) ・奥田小由女(工芸) ・久保田淳(日本文学) ・近藤淳(物性物理学) ・澄川喜一(彫刻) |
・中谷芙二子(彫刻) ・西川恵子(物理化学) ・播磨靖夫(芸術振興)
・松任谷由実(大衆音楽) ・村上博(小説) ・山本東次郎(能楽)
・吉田和子(スポーツ振興) ・吉田稔(科学生物学)
(3) 美術館や博物館の入館が無料になり、いろいろなイベントが行われます。代表的なところに、
① 東京国立近代美術館(千代田区)
② 国立西洋美術館(台東区)
③ 国立科学博物館(台東区)
④ 国立科学博物館附属自然教育園(港区)
⑤ 印刷博物館(文京区)
(4) 芸術祭や文化祭
文化の日を中心に、様々な所で芸術祭や文化祭が開催 されます。代表的なものが「文化庁主催による芸術祭」 です。芸術祭賞(大賞、優秀賞、新人賞など)が選ばれま す。令和4年度の受賞は次の通り。
演劇部門
・大賞(関東参加公演の部)・・・ 「祖先祭 初世初世野村万蔵生誕300年」の成果(株式会社萬萬狂言社)
・大賞(関西参加公演の部)・・・ 「女の一生」の成果(松竹株式会社南座南座)
・優秀賞(関東参加公演の部)・・・芸術祭十月大歌舞伎大歌舞伎第一部「荒川十太夫荒川十太夫」の成果(松竹株式会社歌舞伎座)
・優秀賞(関西参加公演の部)・・・ 「劇団未来 パレードを町ながら」の成果(劇団未来)
・新人賞(関東参加公演の部)・・・ 東宝株式会社「ジャージー・ボーイズ」における演技 花村想太
・新人賞(関西参加公演の部)・・・ 空の驛舎「花を摘む人」の作 (山本 彩)
音楽部門
・大賞(関東参加公演の部)・・・ 「第622回定期演奏会」の成果(公益財団法人読売日本交響楽団)
・大賞(関西参加公演の部)・・・フィリップグラス「浜辺のアインシュタイン」の成果(あおぴニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール)
・優秀賞(関東参加公演の部)・・・「高畠一郎箏リサイタル1834きはめたくたる」の成果(高畠一郎)
・優秀賞(関西参加公演の部)・・・「倉橋容堂古典尺八リサイタル」における「八重衣」の演奏(倉橋 容堂)
・新人賞(関東参加公演の部)・・・ 「日原藤花維柯 箏曲古典の会」ぼ成果 (日原 暢子)
・新人賞(関西参加公演の部)・・・「中嶋俊晴カウンターテナーリサイタル~Dstanz~」の成果(中嶋 俊晴彩)
舞踏部門
・大賞(関東参加公演の部)・・・ 東京バレー団「ラ・バヤデール」の成果 (東京バレー団)
・大賞(関西参加公演の部)・・・ 該当作品なし
・優秀賞(関東参加公演の部)・・・ 「Co.山田うん2022新作InC」の成果 (Co.山田うん)
・優秀賞(関西参加公演の部)・・・法村友井バレエ団公演「クレオパトラ ラ・シルフィード」おけるマッジ」の演技」(法村 圭緒圭緒)
・優秀賞(関西参加公演の部)・・・ 「山村流双葉会」の成果(上方舞山村流)
・新人賞(関東参加公演の部)・・・工藤朋子フラメンコリサイタルvol.3「時と血と地と」の成果(工藤 朋子)
・新人賞(関西参加公演の部)・・・「ANTIBODIES Collective Newcreation/Performance in
AWAJI2022 Linal」における構成・振り付け (東野 祥子)
大衆芸能部門
・大賞(関東参加公演の部)・・・ 該当作品なし
・大賞(関西参加公演の部)・・・「第八回三代目林家菊丸独演会」の成果(林家 菊丸)
・優秀賞(関東参加公演の部)・・・「ハヤシにのって~林家はな平独演会」の成果(林家はな平)
・優秀賞(関東参加公演の部)・・・「春風亭昇也独演会」の成果(春風亭昇也)
・優秀賞(関西参加公演の部)・・・「チキチキジョニー単独ライブ~年ごまかしてたり、クビになったりもしたけど~なん
やかんやで20年」の成果年(チキチキジョニー)
・新人賞(関東参加公演の部)・・・「一龍斎貞鏡修羅場勉強会」の成果(一龍斎貞鏡)
・新人賞(関西参加公演の部)
「第二回京山幸太独演会」の成果」 (京山 幸太)
テレビドラマ部門
・大賞・・・忠臣蔵狂詩曲狂詩曲No.5中村仲蔵出世階段階段)(日本放送協会)
・優秀賞・・・よるドラ「恋せぬふたり」(日本放送協会)
・優秀賞・・・連続ドラマいりびとー異邦人ー(株式会社WOWOW)
・放送個人賞・・・特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」における演技(伊藤 沙莉沙莉)
テレビドキュメンタリー部門
・大賞・・・BS1スペシャル「正義の行方から飯塚事件30年後の迷宮~](日本放送協会)
・優秀賞・・・還らざる日の丸~復帰50年 沖縄と祖国~(琉球放送式会社)
・優秀賞・・・「劇団未来 パレードを町ながら」の成果(劇団未来)
・優秀賞・・・ はだかのER 救命救急の砦2021ー2022(東海テレビ放送株式会社)
・優秀賞・・・通信簿の少女を探して~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~株式会社BSーTBS)
ラジオ部門
・大賞(ドキュメンタリーの部)・・・生涯野球監督 迫田穆成 ~終わりなき情熱~中国放送)
・優秀賞(ドキュメンタリーの部)・・・鉄格子に顔押しつけて 21枚に刻み込んだ“抵抗”(山形放送株式会社)
・優秀賞(ドキュメンタリーの部)・・・ FMシアター「琥珀の人」(日本放送協会)
レコード部門
・大賞・・・人間国宝 野村峰山 初代中尾都山~都山龍尺八の軌跡~(有限会社日本アコースティックレコーズ
・優秀賞・・・藤倉大;ピアノ協奏曲第3番「インパルス」ほか(株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ)
・優秀賞・・・藤田真央 モーツアルト;ピアノ・ソナタ全集(株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ)
なお、大学や中学高校の文化祭もこの時期に開催され、公開されているものが少なくありません。地
方公共団体や、地歩うんっきょてんを奥団体が開催する有名な芸術祭もあります。ただし、そうした芸
術祭は、必ず毎年開催するとは限らず、3年に一度といったものもあります。
文化庁による芸術祭で賞を受けたものが上記のものだというのだが、素朴な疑問として、「映画」は入っていないのだろうか。単に映画部門を知らなかっただけなのかもしれないが、テレビにはフィクションとノンフィクションの両部門が用意されていながら、映画部門がないとしたら、その理由は是非とも知りたいところだ。
執筆日 2023年10月16日(月) (October16th・長月2日)