大掃除について

 12月年末が近づいてくると、大掃除が始まります。新しい年を迎えるに当たって、今までに積もり積もったゴミや埃をきれいにしようというのは自然の気持ちかも知れません。しかし、寒い時期に冷たい水を使って、普段掃除をしないような場所まで丁寧に掃除をするというのは、かなり大変なことです。そんな大変な思いをしてする大掃除とは一体何なのでしょうか。

    大掃除を始める日は決まっているのか

 自分の力の及ばない不思議な現象を起こしたり、その害から守ってくれるのが歳神様だと考えた日本人は、歳神様をできる限り手厚くもてなすことを考えました。それが年末の大掃除であり、正月の準備なのでした。では、年末の大掃除というのはいつやったらいいのでしょうか。現在はたいていの家庭では、仕事の休みの日にならないとできないので、29日.30日にならないと始められない家も多いのではないでしょうか。では、年末の大掃除を始める日は決まっているのでしょうか。

 本来は、普段はついないがしろにしてしまうような隅々まで、心を込めて掃除をすればいいわけですが、江戸城の風習に端(たん)を発して、庶民にまで広まったものがあります。それは、12月13日に始めるというものです。

 これは、江戸時代中期まで使われていた「宣明暦宣明暦(せんみようれき)」という太陰太陰(たいいん)太陽暦の暦で、毎年12月13日は「鬼の日」とされ、婚礼以外は何でも吉という日で、この日が正月の準備をするには最も良い日だとされたのでした。なぜ「鬼」の日なのでしょう。「鬼」では縁起縁起(えんぎ)が悪そうですが、実は、「鬼の日」は、中国の古代の天文学での暦の区分けの「28宿」の「鬼宿鬼宿(きしゆく)日」が「鬼の日」と呼ばれたのです。つまり「鬼」が「宿」にいる日で、外に出ないために悪いことが起こらないと云うことです。「お釈迦様が生まれたのもこの日だった」とも言われています。なお、かつては「松迎え」と言って、正月飾りに使う松を、この日に山に取りに行くという風習もありました。

 大掃除を13日に始めるのは、現代ではなかなか難しく、もっと遅くなりがちですが、少なくとも避けるべきだとされている日があります。それは12月29日と31日、及び1月1日です。29日は、冗談のようですが「二重の苦」につながるとして避けられてきました。31日に大掃除をしてその後正月飾りをするのは、ばたばたしすぎで、間に合わせの雑仕事になってしまい、神様に失礼とされ、葬儀と同じく「一夜飾り」として縁起避けられてきました。もちろん1月1日にしたのではせっかく来てくれた歳神様をはき出してしまい、福を逃がしてしまいます。

 大掃除ではどんなことをするのでしょうか

 「煤払煤払(すすばら)い」は、普段は届かないような天井の煤や、床下のゴミまで取り払って、家の内外をすっかり清めることです。寺院では仏像の御身拭御身拭(おんみぬぐい)として大きな箒(ほうき)で頭上や肩の部分にたまった埃(ほこり)を払っている姿をテレビで見た人もいるでしょう。囲炉裏囲炉裏(いろり)で薪(まき)を燃やすかつての生活では、煤がたまりました。もともと歳神様を迎える準備なので、神棚神棚(かみだな)は特に念入りに清められたと言います。囲炉裏囲炉裏(いろり)の自在鉤自在鉤(じざいかぎ)なども最も煤の酷(ひど)いところで、念入りに掃除されました。

 現代の大掃除では、汚れが酷い場所から手を付けるのがいいようです。これは擦(こす)り洗いに時間をかけるより、汚れの酷い場所は先につけ置きして、一通り掃除が終わってから最後につけ置きしたところの汚れを落とすのが効率的だからです。

 汚れの酷い場所は、家庭によって異なるでしょうから、部屋の一覧表を作って、順番を決めましょう。一般的な目安としては、

 (1) キッチン  (2) お風呂  (3) トイレ  (4) 洗面

 所  (5) 玄関  (6) リビング  (7) 和室

 といった順番ではないでしょうか。

 次に、それぞれの場所の掃除の手順です。

 (1) 置いてあるものを整理する。

 物が少ないほど掃除しやすいのは当たり前です。物が多すぎて収納収納(しゆうのう)場所に収まりきらない時には、処分することも大切です。「1年以上使っていないもの」「これから使う予定のないもの」「壊(こわ)れている、汚(よご)れている物」などはできるだけ処分して、物を少なくするのが、きれいにするコツと言えます。

 (2) 上から下に汚れを落とす

  まず、棚(たな)の上やカーテンレールなど、高い場所の汚れを先に落としましょう。後でまとめて下の空間を掃除すると、汚れを広げることなくきれいにできます。

 (3) 奥から手前に汚れを集める。

  床に落としたゴミは掃除機で吸い取り、その後水拭きをすれ ば完璧です。

  次にそれぞれの場所の掃除のポイントをまとめてみます。

 ① キッチン・・・コンロ周りの汚れを優先して掃除をします。

    頑固な油汚れができるコンロの五徳五徳(ごとく)や換気扇は、洗剤を   混ぜたぬるま湯につけ置きします。汚れをふやかしている   うちに電子レンジや冷蔵庫などの家電を掃除すると効率的   です。

 ② お風呂・・・風呂場は常に湿った環境になるので、カビが

    繁殖しやすい場所です。まずはゴムパッキンの黒カビな    どに漂白剤を付けておきます。残り湯に洗剤を溶かし椅子や桶などの小物をつけ置きします。待っ   ている間に、天井と壁をきれいにし、鏡や水栓についた水垢水垢(みずあか)を落とし、床を洗剤で洗います。落ち    にくいところはつけ置きして後回しにし、別の掃除場所に移ります。

   他のところが終わって、つけ置きしていた物をきれいにし

   たら、換気扇を止めて最後に燻煙燻煙(くんえん)タイプのカビ取り剤を使え   ば完 璧です。

 ③ トイレ・・・トイレはふだんと同じようにマット類を洗濯して、    床と壁をきれいにします。便器に尿石尿石(にようせき)などがたまってい    れば、酸性洗剤で落とし、スタンプタイプの洗浄剤を塗    り、壁や天井のバリアー効果のある洗剤を取り付けまし    ょう。

 ④ 洗面所・・・洗面台は、    排水溝 排水溝(はいすいこう)の髪の毛など   のゴミを取り除き、

    シンクの水垢水垢(みずあか)汚れな               どをクエン酸などで落とします。

 ⑤ 玄関・・・靴を整理し、下駄箱の中の汚れも取り除きます。照明     器具の埃を払い、棚の上をきれいにしたら、床と玄関      ドアをきれいにします。内側が終わったら、玄関外の     タイルなどをきれいにし、玄関ドアの外側の汚れを落     とします。ポストや表札、インターフォンなど、来客     が必ず目にする物は、忘れずにきれいにしましょう。

 ⑥ リビング(居間)・・・上から順にの原則に則り、棚の埃(ほこり)を落とし、家電製品の埃を払いドアノブなど手垢手垢(てあか)     のつきやすいところをきれいに拭()き取ります。窓ガラスもきれいに磨き、窓枠窓枠(まどわく)もきれいにしま     しょう。最後に床の埃を掃除機で吸って、雑巾掛雑巾掛(ぞうきんが)けをしましょう。  

 ⑦ 和室・・・リビングと同じように、上から下への原則に則って掃除をします。特に鴨(かも)()に埃がたまりが     ちですから念入りに掃除しましょう。障子があれば張り替えると明るくなります。

 あとは廊下や階段の掃除ですが、ここも「上から順に」の原則に則(のつと)って、照明器具、壁や手摺手摺(てす)りをきれいにして、埃を落としてから、床のゴミを吸い取り、雑巾掛けしましょう。

 大掃除で出たゴミはなるべく早く始末して、家の中がすっきりできるようにするのも大切です。分別分別(ふんべつ) をきちんとするのはもちろんですが、予(あらかじ)めゴミの収集日を確かめておき、素早く片付けられるようにしましょう。

 こうして大掃除が終わったら、正月の準備を始めます。隅々まできれいにしてから、ご先祖である歳神様を迎えるための準備を始めます。正月の準備だけではなく、冬至やクリスマス、お節料理作りなどもあり、何かと忙しい時期ですが、昔からの正月飾りにもそれぞれに意味があります。それらの意味を噛みしめながら正月の準備をしましょう。正月の準備が一段落したところで、年越蕎麦を食べ、除夜の鐘を聞くのです。

執筆日          2023年11月6日(月)                   (Novemmber6th・長月23日)