年と年度
一年の始まりは1月1日(元旦)で、終わりは12月31日なのに、どうして学校の始まりは4月1日で、終わりは3月31日なのでしょう。
実は世界各国に独自の1年の始まりと終わりがあるのです。
年度の始まりが4月に定着した理由
日本の年度は、過去には4月始まりではなかった時代もありましたが、なぜ4月始まりになり、定着したのでしょうか。
一つは、農業と深い関係があるということです。江戸時代のおもな納税者は農民で、年貢を米で納めていました。明治時代になると、税金は米ではなく、換金された現金で支払われるようになりました。秋に収穫した米を現金に換えて国に税金を納めるとなるとどうしても時間がかかります。そのために4月になったという説があります。米で納税していた時代には、10月が年度の始まりだった時代があり、1月始まりや7月始まりなど、何度か変更された後に4月始まりに落ち着きました。
もう一つは、国の財政赤字を解消するために4月になったという説があります。富国強兵を目指していた明治初期の日本は、軍事費に多くの予算を投入し、財政が赤字になってしまいました。そこで当時の大蔵省(現在の財務省)の長官に当たる大蔵卿が、赤字を削減するために次年度の予算の一部を充てるという施策を講じました。しかし、その年度の赤字は解消できても、次年度の予算が少なくなり、再び赤字になります。そこで当時7月始まりで翌年6月までだった年度を翌年3月までと短くしました。この結果、1年度が9ヶ月に短縮され、予算が減っても持ちこたえられるように辻褄を合わせ、赤字を削減したのです。それにともなって次年度の始まりを4月にしたのが始まりだと言われています。
年間の期間が短くなれば、その年は予算が少なくて済みますが、それが続くはずがありません。実際には、短くなった月数分の給与の支払いをしなくて済んだというのが大きいようです。旧暦では閏月があって年間13ヶ月あった年を新暦に替えて、給与を1ヶ月分削減したり、暦の変更によって生じた日数の少ない月の給料をなくしたりするようなことがしばしば行われ、赤字の削減を図っていたのです。
三つ目には、イギリスの真似をしたという説があります。年度や税収の管理の考え方が日本に入ってきたときに、大きな影響力を持っていたのがイギリスでした。もともとイギリスの年度の始まりは、ユリウス暦に基づいた3月25日でしたが、1752年にグレゴリオ暦が導入された際に1月1日に変更されました。しかし、大きな混乱を招く可能性があり、1月ではなく4月始まりにしたという経緯があります。
ちなみに、学校が4月始まりになったのは、学校年度が作られたわけではなく、会計年度が4月始まりとなったために、予算の計上が4月に始まるようになったためという、教育的な意味とは関係ない経済上の理由だけでした。
諸外国の会計年度
日本の会計年度が4月始まりなのに対して、諸外国の会計年度は次のようになっています。
・1月始まり・・・ ヨーロッパ、中国、韓国
・10月始まり・・・北アメリカ
諸外国の学校の年度
・1月始まり・・・シンガポール、スリランカ、バングラデシュ、ケニア、ザンビア、コロンビア他
・2月始まり・・・オーストラリア、ニュージーランド、モザンビーク、ニカラグア、ブラジル他
・3月始まり・・・韓国、ペルー
・4月始まり・・・日本、北朝鮮、インド、パキスタン、ネパール
・5月始まり・・・タイ
・6月始まり・・・フィリピン、ミャンマースーダン
・7月始まり・・・インドネシア
・8月始まり・・・ドミニカ共和国
・9月始まり・・・ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、中国、ベトナム、エチオピア、ガーナ他
・10月始まり・・・カンボジア、ギニア、セネガル、トーゴ、ニジェール、ペナン、マリ他
日本での年度の種類
・6月始まり・・・生糸年度、肥料年度
・7月始まり・・・羊毛年度、麦年度、醸造年度
・8月始まり・・・綿花年度、
・9月始まり・・・芋年度、
・10月始まり・・・砂糖年度、大豆年度、澱粉年度、農薬年度、
・11月始まり・・・米穀年度、藁工品年度
・1月始まり・・・貿易年度
などといったものがあり、それぞれの伝統と都合で維持されています。
9月入学のメリットとデメリット
(1) メリット
・海外に合わせたスケジュールと成田目、留学や海外からの受け入れ場スムーズになる。
・進級前に夏休みが入ることで、進路を見すえて長期休みの有効活用が期待できる。
(2) デメリット
・入学時期変更に必要となる膨大な量の手続きの変更、それに関連するコストの増大。
・移行期間中、当事者となる子供達は、学年末の延長、入学時期の遅れなどが生まれるため、不公平感 や格差が生まれる可能性もある。
・年間に行われる、様々な学校行事や鯛解凍の時期変更が必要となる。
・変更にかかる手続きは、学校関連だけでなく、企業にも必要となり、社会全体に影響が及ぶ。
移行終了後のメリットは大きいが、長い間続いてきたものを変更するには、移行期間中の影響が大きい。そのため慎重な対応が必要となり、移行に関する具体的な方法として検討されているのは、次の三つの案です。
① 1年での移行を目標とする「一斉実施案」
最初の年度に小学校に入学スリ1年生の実のみ4月2日から翌年の9月1日生まれまでの17ヶ月分の 学年とする。
メリット・・・一度に移行でき、翌年以降は通常に戻れる。
デメリット・・・初年度は、他学年の1.4倍の人数となり、受験や就職に不利が生まれる。
学童保育や保育園への待機児童が、一時的に激増する。
初年度のみ教員の数が2万人以上不足する。
年長保育を半分しか受けられない自走が増える。
② 5年掛けての移行を目標とする「段階指摘実施案」
小一を4月2日生まれから良く5月1日生まれの誕生月13が月の学年とし、5年がかりで一ヶ月ずつ ずらして6年目から12ヶ月に戻す案。
メリット・・・負担を5年間に分散できる。
デメリット・・・子育て支援費の支給に、毎年システム改修が必要となる。
毎年の学年の範囲が複雑になる。
学童保育や保育編への待機児童が一時的ではあれかなり増える。
③ 一学年は4月2日から翌年の4月2日生まれという枠組みは変わらず、小学校入学時の4月~9月ま でのみを「ゼロ年生」として入学させ、2年生からは9月から通常通りの進級という、「ゼロ年生案」(こ れは小学校のみ6年半通うこととなる。)
メリット・・・保育所の新たな待機児童は発生しない。
学年内の月例佐之開きや学年の分断がない。
学年の人数は増えない。
デメリット・・・毎年学童保育に大量の待機児童が発生する。
小学校の教師が大量に不足する。
執筆日 2023年3月11日(月) (March11th・如月2日)