誕生・お七夜・お宮参り

       【目次】はじめに

           1.産声

           2.お七夜

           3.お宮参り

はじめに
 妊娠5カ月目の戌の日に始まり、誕生・命名・お七夜と赤ちゃんが生後1歳になるまでは健やかな成長を願う祝い事がいっぱいです。おもなものは次の通りです。
・生後7日 「お七夜」
・生後30日前後 「お宮参り」
・生後100日 「百日祝い・お食い初め」
 このほか、生まれた時期によっては、「端午の節句」や「桃の節句」などの初節句も同じ時期にお祝いとなることもあります。
 後々気づいたら「あれ?あの行事やってないな」ということのないように、赤ちゃんの行事についてまとめておきます。

1.産声
 胎児は誕生の瞬間に、大きな産声を上げます。これが元気な赤ちゃんが生まれた証拠として、見守る大人達をほっとさせます。この産声を上げるのはこういう仕組みです。
 胎児は子宮の中で自分で作った膜の中の液「羊水」に浮かんでいます。この時は胎盤から臍帯を通じて酸素を得ています。生まれた瞬間に子宮の外に出ると、つぶれていた肺が広がって空気が入り、酸素と二酸化炭素の「ガス交換」をする自発呼吸を始めます。それまで使っていなかった肺を大きく広げて 呼吸を始めるときに出るのが「産声」です。これは元気に生まれてきた証拠であると同時に、人生最初の苦痛を味わうときであるとも言われています。生きていくのは大変なことなのです。私たちは最初の困難や不快感を味わって生まれてくるのだともいわれています。生きていくことは楽しいことであると共に、それだけではなく、辛く厳しいこともあるということを、最初に教えられるのかもしれません。生後一歳になるまでに祝い事が盛りだくさんなのは、そのことと無関係ではないかもしれません。

2.お七夜
 お七夜は、赤ちゃんの誕生と7日間無事に成長できたことを祝う行事です。同時に「命名式」という赤ちゃんの名前を発表する儀式も行います。名付け親が赤ちゃんの名前を書いた奉書紙を白木台に乗せ、鯛や鮭を添えてお祝いするのが伝統的な形です。
 生まれた日を生後1日目とし、そこから数えて7日目に行われます。よく聞く産後〇日目という場合は、生まれた日は0日目なので、お七夜とは数え方が違います。
 昔は医療も未発達で、生まれてまもなく命を落としてしまうことが少なくありませんでした。そこで、赤ちゃんに名前を付けるのを少し待ち、7日目を迎えた時点で名前を付けたのです。
 古くからの風習では、お七夜は父親方のおじいちゃんが主催して、親戚一同で盛大に祝われていました。時代が変わり、現代では誰が主催して、誰を呼ばなければならないと決まっているわけではありません。お七夜のメインとなるのは、「命名式」です。命名式では、「命名紙」または「命名書」と呼ばれる紙に赤ちゃんの名前や生年月日を書き、家族や親戚に披露します。命名紙(書)に使用するのは奉書紙です。奉書紙は厚みのある和紙で命令などを伝達する文書(奉書)に使用されたためにこの名前が付いたのです。赤ちゃんの名前や生年月日が書かれるのはもちろんですが、正式な記載の方法があります。
(1) 奉書紙のつるつるの側を外側にします。
(2) 下から折り曲げて二つ折りにし、右側と左側を折
 り込んで、縦に三つ折りにします。
(3) 三つ折りを開き、折り目を下にします。
(4) 折り目を付けた右側の部分に「命名書」と書きま
 す。
(5) 真ん中部分の右上に保護者の氏名をフルネームで
 書き、その下に長男、長女などの「続柄」を小さめ
 に書きます。
(6) 真ん中部分の中心に、大きく赤ちゃんの名前を書
 きます。
(7) 真ん中部分の左側、少し下の部分に赤ちゃんの生年 月日を小さめに書きます。
(8) 左側の部分にお七夜の日付、名付け親の名前をフル ネームで書きます。名付け親が両親の場合は
 両親の名をフルネームで書きます。
(9) すべて書き終えたら、折り目に沿って三つ折りにし、別の奉書紙で包

みます。
 これが正式な書き方ですが、一枚の奉書紙に、中央に「命名」として赤ちゃんの名前を大書し、右に両親の名と続柄、左に誕生日を書くだけで、命名式終了後に壁などに貼りやすいものとした、「略式」の命名書や、毛筆ではなくカラフルなサインペンを用いたものや、色紙を代用したものなどもあります。
 無事に育ち名前も決まったことから今後の一層の健やかな成長を記念して、お七夜では豪華なお祝い膳を囲みます。赤飯、尾頭付きの鯛、ハマグリのお吸い物、紅白なますなどの縁起物が準備されます。生後100日目の「お食い初め」と料理の内容は似ています。なお、赤ちゃんの手形や足形を取り、記念撮影を行う人も多いようです。また、赤ちゃんの服装には特別なきまりはありませんが、記念写真を撮るとしたら、それなりのものを着せるのが望ましいかもしれません。
 人生最初の「 行事 」であるお七夜ですが、最近ではお七夜を行わない方が少なくはないようです。出産の為に入院した母親と赤ちゃんの退院がこの辺りになり、無事に退院したお祝いと合わせて行われることもある一方、出産方法や検査結果、産後ケアの内容によっても病院によって退院までの日数は前後します。産後間もない母親の体調を考えると、無理に大勢で行わなくても良いとされるようです。
 また、役所への出生届の提出も国内での出産であれば、産後14日以内にお子さまのお名前を決定し提出となりますので、絶対に7日以内に名前を決めなければならないというわけではありません。
 お七夜は 命名式 とも言われ、「赤ちゃんの健やかな成長を願って名前をつけ、皆にお披露目する行事」の為、名前が決まっていないからとお祝いしないケースもあるようです。
 最後に、「お七夜」を「初七日」との言い間違うことがあります。「初七日」は、人が亡くなってから7日目に行う法事で、まったく逆の意味となります。くれぐれも言い間違うことのないように気をつけましょう。

3.お宮参り
 お宮参りは、産後初めて赤ちゃんと一緒に本格的な外出をしてお祝いする行事です。もともと、生まれた土地の守護神である産土神に赤ちゃんが無事に誕生したことを報告し、今後の健やかな成長をお祈りする儀式です。「産土詣」と呼ばれるお産の後に神様に挨拶する風習を起源とし、室町時代に「お宮参り」と呼ばれるようになりました。現在では「初宮参り」「初宮詣で」という呼び方もあります。
 正式な習わしでは、生まれた日を1日目と数え、男の子は生後31日目~32日目、女の子は生後32日目~33日目に行います。しかし、現在ではお宮参りの時期に厳密なきまりを設けず、生後1ヶ月頃を目安にすることが多くなっています。地域によっては100日祝いである「お食い初め」と一緒に行うところもあり、赤ちゃんや母親の体調を考えて行う方がむしろ普通になってきています。
 一般的にお宮参りは、神社に参拝してご祈祷を受けます。赤ちゃんや母親の体調によっては、ご祈祷を受けずに、参拝だけで済ませても問題ありません。水天宮などの有名神社へのお参りが行われることがありますが、本来は地元の産土神への参拝が基本です。参拝の後は、事情が許せば記念撮影をしたり、食事会を開くのもいいでしょう。
 お宮参りでご祈祷を受けるときには、「初穂料」と呼ばれる謝礼を神社に納めます。のし袋に蝶結びの水引きが付いたものを用意します。蝶結びの水引きは、「何度あってもうれしいこと」の場合に使います。結び切りやあわじ結びの水引きは「一度きりにしたい」「二度あってほしくない」場合に使うものです。のし袋には、「初穂料」と記し、その下に赤ちゃんの名前を記します。
 伝統的な仕来りでは、赤ちゃんは父方の祖母が抱くことになっています。これは、昔は出血を伴うお産が穢れとして忌まれたことから、「穢れのある母親が、お宮参りで赤ちゃんを抱くべきではない」と考えられた毛かだということですが、現在ではあまりこだわる必要はないとされています。もともと地方によって風習はまちまちです。父方のおばあちゃんと母親だけでお参りする地方、仲人が同行する地方、近所の人まで同行する地方などがあるそうです。
 服装について特別にこだわる必要はありません。ただ、正式には赤ちゃんは和装することになっています。「白羽二重」と呼ばれる着物の上に、祝着を掛けます。男の子の祝着には、熨斗目模様に兜や鷹、武者、龍などの柄が人気です。色味は黒や紺、緑、灰が定番とされています。女の子の祝着は友禅模様に桜や牡丹、蝶、花車、御所車などの柄が好まれているそうです。もちろんベビードレスでも構いません。付き添いの大人達の服装も、特別なものにする必要はなく、派手すぎたりカジュアルすぎるものを避ければ充分です。
 お七夜が母親の体調や名付けが間に合わないといった理由から行われないことも少なくないため、赤ちゃんにとって家族揃って迎える最初の行事がお宮参りになるケースが多くなっています。祖父母にとって初孫という場合では、両親以上に気合いが入ることもしばしばです。皆で気持ちよくお祝いができるよう事前に調整しておきましょう。

執筆日 2024年4月(卯月)22日(月)        (Aprir22th Monday・弥生月14日)